花王株式会社(以下花王様)は、2023年6月からMiletos株式会社(以下Miletos)のAI経費精算ソリューションSAPPHIRE for Enterprise(以下SAPPHIRE)の本格運用を開始しました。花王様ではSAPPHIREを国内の全グループ企業に導入し、3万人超の社員がSAPPHIREを利用して経費精算を行っています。 導入前の課題や導入後の効果について、花王ビジネスアソシエ株式会社の上野様に伺いました。
花王ビジネスアソシエ株式会社
ビジネスサポートセンター 会計サービスグループ 部長
上野 篤 様
Miletos株式会社
代表取締役社長 兼 CEO
髙橋 康文
- 狙い
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- AIを活用することで、経費精算プロセスの工数を削減したい
- コスト削減と統制の高度化を同時に推進したい
- 効果
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- AI-OCRや交通系ICカード連携により、経費精算にかかる工数が約半分に
- 事前の手配情報が経費精算に自動的に展開するので、工数削減と誤謬防止を実現
- ユーザー数課金のSAPPHIRE導入により、無駄なコストを削減
従量課金での契約件数余剰、交通系ICカード連携などの新しいサービス導入時に発生する追加コストに悩んでいた
髙橋
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上野様の現在のお仕事の内容について教えてください。
上野様
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国内花王グループの支払い代行を中心としたシェアードサービス会社で、会計サービスグループ約80名の部長をさせていただいています。間接材購買eマーケットプレイスの拡大、請求書のデジタル化、ビジネスキャッシュレス拡大、デジタルインボイス(Peppol)普及への業界を超えた取り組みなど、債券債務管理におけるあらゆる紙を無くす取り組みを全社挙げて実施しています。
髙橋
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SAPPHIRE導入前は、どのようなプロセスで経費精算をされていらっしゃいましたか? また、どのような課題をお持ちでしたか?
上野様
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それまで自社開発だった経費精算システムを2018年にクラウドサービス化しましたが、コロナでの経費精算件数の減少また収束後の社会活動の闊達化にともなう増加など、従量課金での契約件数余剰や不足による無駄なコストの発生に悩んでいました。同時に、領収書OCR機能や交通系ICカード連携など新しいサービス導入時に発生する追加コストの為に、社員サービスを上げられないというジレンマを抱えてもいました。また、ユーザーインタフェースの改善が思いのほか進んでこなかったこの数年間を振り返ると、今後のAI化や入力工数削減についても大きな期待が出来ないのでは…という思いもありました。
経費申請する従業員の工数は激減、承認者は事前申請時にコストの把握まで可能に、経理は異常データへの目視確認のみに特化へ
髙橋
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SAPPHIREを導入後、上記の課題はどのように解決されましたか?
上野様
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まず、日本特有(特に弊社では重視)の事前申請という慣習に注目しました。それからキャッシュレス=会社決済の拡大、これらをSAPPHIREのコンセプトの中心に据えることで、「精算レス=事前精算的な世界が作れるのでは」と考えたのです。出張時の手配では会社決済を基本とし現地支払いを極小化します。また、手配情報をそのまま即時に精算情報としてSAPPHIRE上に展開することで、以前は「手配入力+事前申請入力+精算入力」の3アクションだったものが「手配入力+日当などの追加入力」だけになり、精算入力は殆ど無くなりました。
髙橋
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経費申請をする従業員の方、承認をする上長、処理を担当する経理の方、それぞれにどんなメリットが発生したとお考えですか?
上野様
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経費申請する社員側は事前の手配情報が経費精算に自動的に展開されるので、これまでは同じ工程を申請時+精算時の2回入力していましたが、1回で済むためそれだけでも、その工数は半減しています。承認する側もこれまではその出張にいくらのコストがかかるのかまったく分からず承認していましたが、SAPPHIREでは承認時にそのコストが把握できます。経理としては怪しい領収書画像の目視のみに特化できるようになりましたが、ここも将来的にはAIチェックで完結したいところです。
経理チェックを含めた経費精算にかかる工程を半減!ユーザー数課金であるSAPPHIREの優位性は揺るがない。
髙橋
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SAPPHIREの導入により、経費精算プロセスの効率性が向上しましたか?
上野様
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これまで述べてきたように凡そ50%程度の効率化に成功しました。
髙橋
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SAPPHIREは経費の透明性を向上させるのにどのように貢献していますか?
上野様
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まずは現地支払いや個人立替を極小化することによる不正防止、領収書画像のAI-OCRによる誤謬防止、事前申請ならぬ事前精算にすることでのコスト意識の向上などその効果は絶大です。
髙橋
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SAPPHIREの導入により、コストの節約やコスト効率の向上が実現されましたか?
上野様
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今後の検証が必要ですが、コロナが収束し社会活動が元に戻り、さらにはビジネスの拡大に伴ってその経費は大きくなりつつあります。経費精算件数も比例するように伸びてきています。これまでの従量課金制のサービスよりユーザー数課金であるSAPPHIREの優位性は揺るがないものと考えています。
問い合わせの80%をチャットボットで処理。「全社に影響する経費精算システムの入れ替えは面倒だ」という時代は終わり
髙橋
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経費精算システムの入れ替えは利用される従業員の方への影響も大きいと思うのですが、大きな混乱などはありましたか? 導入において工夫された点などありますか?
上野様
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SAPPHIREのチュートリアル機能に加えて、今回はサイシード社のチャットポッドを内蔵しました。稼働当初予測されていた問い合わせの80%以上をこのチャットポッドが処理し、実に60%近くの回答到達率を達成しました。これにより問い合わせ対応業務の6,000時間/年が効率化され、多くの社員の満足度向上にも繋がりました。もはや「全社に影響する経費精算システムの入れ替えは面倒だ」という時代は終わりました。
髙橋
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将来的な展望について、改善計画やご要望、Miletosに期待することを教えてください。
上野様
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そうですね。ここが一番重要なところです。結果的に約5年間利用してきた以前のクラウドサービスではこの年数相応(期待)以上の進化が得られませんでした。サービスベンダー様側と花王側に内在する様々な要因が考えられますが、花王は新しいチャレンジとしてMiletos社との協働を選びました。今後は更にAI利用を加速し、経費種別の自動判定=自動仕訳、手配情報+事前申請+コーポレートカード実績等の実績データの自動紐付け(自動精算)、経理承認の自動化など、まだまだ進化しなければならない領域が山のようにあります。これからが本当の意味での変革です。大いに期待しています。
髙橋
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ありがとうございます。引き続き、花王様と共にAIなどの最新技術を取り入れた新しいプロダクトの開発に取り組んでいければと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。